大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)86号 判決

当事者間に争いのない請求原因事実によれば、原告らの本訴請求は理由があることになるから、本訴請求を認容する。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

(一) 特許庁における手続の経緯

1 原告両名は、名称を「α―オレフインを選択的に重合して結晶性または無定形のポリマーにする方法」とする特許第二五六〇二九号発明の共同の特許権者である。

被告は昭和三七年一月九日特許庁に対し、前記特許発明について特許の無効審判を請求し、昭和三七年審判第四号事件として審理された結果、昭和四七年一一月二一日付で「本件特許を無効とする。」旨の審決がなされ、その審決書謄本は、昭和四八年三月二八日、原告らに送達された。なお、この審決の取消しを求める訴えについては、出訴期間として三カ月を附加された。

(二) 本件特許発明の要旨

トリウムとウランを含めて周期律第4~6A族金属の化合物より成り、少くとも表面においてアルキル基と多価金属との間の結合を含み、前記金属の化合物と、周期律第2または3族の金属、殊にアルミニウム・マグネシウムまたは、亜鉛の有機化合物との反応によつて得た触媒を使用して、α―オレフイン、殊にプロピレンを選択的に重合し、一〇〇〇以上の分子量を有する頭尾ポリマーにする方法において、

(a)(イ) 固体で特に結晶性かつ不溶性の触媒かまたは

(ロ) 粗分散性の触媒もしくはその双方を

使用することにより、

CH2基とCH・R基とを規則正しい順序で長い連鎖中に有し、その中では主鎖の不斉炭素原子が少くとも分子の長い区間に同一の立体配置を呈し、結晶化の傾向の著しいポリオレフイン(イソタクト構造のポリマー)を生じる方向に重合を導くか、または

(b)(イ) 無定形・液状または溶解した触媒かまたは

(ロ) 高分散性の触媒もしくはその双方を

使用することにより、

両立体配置の不斉炭素原子が主鎖に沿つて統計的の分布を示すような無定形のオレフインポリマー(非イソタクト構造のポリマー)を生じる方向に重合を導くことを特徴とする。

α―オレフインを選択的に重合して結晶性または無定形のポリマーにする方法

(三) 審決理由の要点

本件特許発明の要旨は、前項のとおりである。

しかしながら、請求人(本件被告)が提出した町田和夫および藻谷研介作成の実験報告書によれば、別表記載一二組の触媒組合わせによつては固形ポリプロピレンは生成しないことが認められる。

したがつて、本件特許発明は、実施不能部分を含むといわなければならない。

そうすると、本件特許は、特許法施行法第二五条第一項によりなおその効力を有する旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第五七条第一項により無効とすべきものである。

(四) 審決を取り消すべき事由

原告らは、昭和四八年六月二六日特許庁に対し、本件特許発明の明細書における特許請求の範囲の記載を、審決が本件特許発明の要旨として認定した前項掲記のものから、「チタンの化合物を含みかつ少くとも表面にアルキル基と多価金属との間の結合を含みかつ該チタン化合物は実質的にその元の結晶構造を保持し、しかも(a)三塩化チタンと(b)アルミニウム・ジアルキル・モノクロライドとを反応させることによつて得られた固体で特に結晶性の触媒を使用して、重合を主鎖の不斉炭素原子が少くとも分子の長い区間に同一の立体配置を呈し、結晶化への著しい傾向を有する規則正しい順序で長い直鎖中にCH2基とCH・R基とを有するイソタクト構造の重合体の形成に導くことによりプロピレンとn―ブテン―1からなる群からえらばれたα―オレフインを一〇〇〇以上の分子量を有する実質的に非分岐の頭尾ポリマーに重合する方法」に訂正することを認める旨の審判を請求したところ、昭和四八年審判第四二八一号事件として審理され、昭和五二年二月二二日本件特許発明の明細書を前記のとおり訂正することを認める旨の審決がなされ、この審決は確定した。

これにより、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲は、当初から訂正された明細書の特許請求の範囲のとおりの内容のものとみなされるに至つた。

そうすると、審決が、これによつては固形ポリプロピレンは生成せず発明を実施できない、と認定した一二組の触媒成分の組合わせは、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲に含まれないこととなつた。

したがつて、審決が本件特許発明の要旨として認定したところは、本件特許発明の要旨と合致しないものとなり、結局本件審決は、本件特許発明の要旨を誤認したことになるので、とうてい取消しを免れない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!